まず糖尿病とは、インスリンの働きが低下したり効きが悪くなったりして、慢性的な高血糖をきたす病気です。
糖尿病と合併症
糖尿病は、軽症の間はほとんど症状を現さないため、病気の自覚が無いまま長く放置されやすく、気づかないうちに合併症がどんどん進行している危険性があり、症状が出始めた時にはかなり悪化してしまっていることが多く、そのまま放置してしまえば様々な合併症により生活の質の低下につながり、最悪なケースでは失明や心血管病の発症などをきたし命に関わることになりかねません。
そして「歯周病」も、糖尿病網膜症や動脈効果などに次ぐ「糖尿病の第6の合併症」と言われるようになり、特に糖尿病の患者様においては歯周病の発症や進行のリスクが高い事が分かってきています。
歯周病になると、歯周病菌によって起こる炎症などによりインスリンが利きづらい状態になって糖尿病が悪化し、歯周病が悪化することで血糖のコントロールが更に悪くなり、インスリンの投与量が2倍以上必要になることさえあります。逆に適切な治療を受けて歯周病が改善してくると、またインスリンの必要量が減っていきます。
歯周病・糖尿病から守るための予防歯科
日本の糖尿病人口は増加の一途を辿っており、40歳以上の3人に1人が、糖尿病または糖尿病予備軍になっていると言われます。
また、2014年の糖尿病アトラス(IDF:国際糖尿病連合)によれば、現在の成人糖尿病人口は721万人(診断を受けていない患者様を含めると1,110万人)で、糖尿病人口の世界ランキング・ワースト第10位となっているにも関わらず、早期では自覚症状が乏しく、ご自身が糖尿病だと気づかないことが少なくないため、糖尿病の疑いが強い人の中で治療を受けている人は約半数というのが現状です(平成14年糖尿病実態調査より)。
実際に、歯周病の症状を感じて当院を受診される患者様の中には、糖尿病の治療を受けていない人や、糖尿病であることに気がついていらっしゃらない人も多いのです。
糖尿病になると、口腔内の乾燥や喉の渇きがあったり、独特な口臭や創傷部位が治癒しにくかったり(炎症がおさまりにくい)というお口に関連した症状が見られることがあり、歯周病の症状がある人は、糖尿病でなくても糖尿病予備軍である高血糖の状態である可能性が否定できません。
糖尿病の人は歯周病にかかりやすい
歯周病の人は糖尿病あるいは糖尿病予備軍であることが多いと考えられています。そして、糖尿病の人はそうでない人に比べ2倍以上の確率で歯周病にかかりやすく、これに対し、歯周病の人はそうでない人よりも糖尿病の罹患率が高く、また、糖尿病でなくてもその予備軍である血糖値が高めの人が多いことが分かってきております。
糖尿病の人は歯周病が重症化しやすい
糖尿病の人はそうでない人よりも歯周病が重症化しやすい傾向にあり、血糖コントロールが悪いと、歯周病の治療効果も出にくくなっています。
糖尿病そのものの予防や治療については、生活習慣の改善や専門の医療機関での治療を欠かすことができませんが、糖尿病になりづらい・悪化させないという点においては、歯科医院での歯周病予防・治療が非常に重要となります。
また、歯周病の悪化している糖尿病患者様に対し、超音波スケーラーと抗菌薬で歯周病治療を徹底して行うと血糖値が下がる傾向にあるとも言われておりますので、歯周病の原因であるプラークを定期的に除去するなど、口腔内の清掃を継続することも大切です。
そのためにも安心できる「かかりつけ歯科医」を見つけ、「痛くなくても定期的に歯科を受診」する習慣を持つことで、生涯にわたる健康維持のサイクルを確立することをオススメ致します。